今回は、何故わざわざ遠回りをして、しかも海外という難しい環境ででも、今バレエ教師国家資格取得を目指すのか、社会人を辞めてまた勉強の道を選んだのか。
そこについて、自分の考えるバレエ教育の問題についても含めてお話ししていきたいと思います。
いきなり結論。
これまでの20年超のバレエ人生の中で、実際に経験したこと、そしてそこから得た学びと気づき、具体的には、国によってダンス教師も資格が必要な職業であること、「正しい」教育法、教師側の最低限の知識の必要性を一人でも多くの方に知ってもらうことで、少しでも、間違った教育による「悲劇」(もったいない諦め)を減らしていけるよう、貢献していきたい
というこの目標を実現するために、似ても似つかないフランス語の分厚い分厚い壁にも臆することなく?、
わざわざ日本から遥か1万キロ離れたこのフランスで、DE取得教育プログラムに参加しています。
渡仏するまで
以前、自己紹介記事でもお伝えしたように、大学卒業後、2019年秋に渡仏するまで約2年間、計2つの会社で働いておりました。
新卒で就職した会社では、希望の部署では無いところに配属になりましたが、せめて2〜3年は働くつもりでした。しかし、現場で働くうちに現実を知り、過酷な環境で働き続ける上司たちの姿を見て、私にはここまでこの会社に尽くせる自信が一気になくなってしまいました。たった数ヶ月で、その会社や仕事の何がわかる、と言われてしまえばそれまでですが、ここで働くやりがいと意義を早々に喪失してしまい、それならバイトしながらでも、今しかできないことに挑戦したいという気持ちが固まり、結果1年足らずで退職することになりました。わずかな期間でしたが、もちろんそこで学んだことはたくさんありますし、面倒を見ていただいた先輩・上司の方々、そして大変な時を共に過ごした仲間に対する感謝の気持ちは決して忘れません。
その後、運よく翌月の12月から、それまでとは全く異なる分野の会社に雇っていただき、渡仏直前まで働かせていただいておりました。
そして、自分の中で意義を見出せるものは何か、何のためならどんなに苦しくても耐えられるのか、と改めて考え直した結果、やはり「バレエ」でした。
ただバレエ教師になりたいだけなら…
もし、ただバレエ教師になる、という事実だけで満足なら、日本の自分の出身のスタジオや、バイトでアシスタントをしながら初めて経験を積めば、いずれは自分のスタジオを開くことは不可能では無いと思います。(生徒が集まって、それで食べていけるかどうかは別として)
しかし、言ってしまえば誰でもなれてしまう日本では、経験に基づいて、その教師の名声・キャリアの面が最初に見られる気がします。
そのため、日本で教師として活躍するには、無名・無キャリアの自分は、どちらかというと不利であり、また、自分も例に漏れず、経験のみを頼って指導することになってしまいます。そこで頭に浮かんだのが、フランスで現在も施行されているバレエ(ダンス)教師国家資格制度、およびDE教育プログラムでした。
自分の考える、バレエ教育の問題点
そもそも、何故教師という職を考え始めたのか、その理由はバレエ教育の問題点にあります。
日本では、
・経験に基づいた指導→各教師によって内容が千差万別
・メソッドがごちゃ混ぜなことが少なくない(だから正解がわからない、またそもそもバレエ用語が英語版とフランス語版などで混ざって使われてたり)
・体を使って、非日常的な動きをトレーニングするバレエは、大きなリスクを伴っているにもかかわらず、教師側の知識が不十分なことにより、無理な指導が行われる
→不要な筋肉の発達、身体への負担が大きくなり、場合によってはダンサーを諦めなければならないことも/またはいくら熱心にレッスンに通っても、なかなか上達につながらず、残念ながら踊る楽しみを体感する前にバレエを辞めてしまう子も…
もちろん、全ての教師の方、教室が該当するわけでは無いです。
最低限の知識の必要性
当たり前ですが、この資格制度はそもそも歴史や環境が異なるフランスにおいて実現されているものなので、日本でも全く同じようにすることは一筋縄ではいかないと思います。
しかし、身体に対して大きなリスクを負って行うものである以上、生徒側が安心して身体を委ねられるように、教師側が責任を持って、最低限の教養・知識は持つべきだと、私は思います。
もちろん、現・元プロダンサーの方々のレッスンは、まずその美しいお手本姿から視覚的に、そしてその方々が成功してきた「コツ」を学ぶことはとても有意義なことだと思います。
しかし、常にその教師のキャリアの華々しさ=指導の質や上達・将来の保証
では無いのです。
教師という職は、良くも悪くも、その質・力量によって、ダンサーを目指す卵たちの将来が(ある程度)委ねられていると言っても過言では無いと思っています。
生徒にとって、教師はある意味「絶対的」存在になることが多く、その先生の言葉を信じて毎日練習に励んでいるはずです。趣味の習い事だったとしても、その教師の指導のもとにその人のバレエのベースが作られていくのです。
しかし、中には所属スタジオ以外のレッスンや講習への参加を禁止するところもあります。
そうするとどうなるか。ますます、教師の考え・経験が、その生徒にとっての全てになる危険性が一層高まると思うのです。
実際、自分自身も年齢が上がり大人に近づくにつれて、レッスン中の指導内容に疑問を持つことが増えていきました。
例えが抽象的、あやふや、説明が的を得ていない…そこで自分で自習時間に直そうとするも、限界があり…先生によって言ってくる事が180°違う…などなど。
もちろん、各教師によって教える「コツ」はバラエティがあって良いと思いますが、これらの問題は、やはりベースが「経験」であり、「事実」ではないことから起こっているのではないかと思います。
資格取得後、その先の目標
現在は、本当に多くの日本人ダンサーの方が世界中でご活躍されており、またバレエ留学経験のある方も昔に比べて随分と増えている思うので、その海外で受けた教育と日本のが比較され、その影響を受け、これから少しずつ変化していくのかもしれません。
また、先にも述べたように、フランスとはそもそもが違うので、日本でもバレエ教師資格制度導入が絶対とは言えないと思います。また、当然ですがメリットばかりではありません。それまで日本では、バレエ教師という職業は、比較的開かれたものであったものが、資格取得が義務になることによって一気に狭まることになり、開き続けられる教室の数もぐっと減ることでしょう。そうすると、地域によっては、バレエが習いたくても教室がなくて習う事が難しい、と言った状況も出てくるかもしれません。また、日本においては芸術に対する国からの援助は、フランス他の国と比べると手厚いとは言えません。バレエ団のある程度のポジションで活躍されているプロのダンサーの方でさえも、いくつもの教室で教えを掛け持ちしてやりくりしたり、バイトもしなければ食べていけなかったり、と言った厳しい状況において、それとさらに並行して資格取得のために400時間超もかけることは、かなり難しいことだと思います。
もちろん、こういった問題を、無名な人間一人の力でどうこう変えられるものではないことは、十分理解しております。
しかし、日本のバレエ教育について疑問を持ち始め、2019年から2年弱、この教育プログラムにおいて、解剖学で身体の仕組みなど、バレエ(ダンス)を異なった視点から学んだ上で、今まで受けてきたバレエ教育について振返ってみると、少なくともある程度の割合の問題は、バレエを教える前提としての教育制度がないことによって起こっているであろうということに気づかされました。
まだ一人前の教師になってすらいないのに、こんなにつらつらと私論を並べ立てても説得力の欠けらもないですが、偶然そして幸せなことに教育プログラムを受ける(受けた)機会を持てた者として、
「教師の質・最低限の教養知識の大切さ」を伝えていくこと、そしてこれまでの実体験・学習を、間違ったバレエ教育による「悲劇」を少しでも減らすために、未来のダンサー、そしてバレエを愛する全ての人のため役立てていくべきだと思っています。
「教師のキャリアではなく、質で教室選びを」(選ぶ側にもそれを見極める目を持つ必要性はあると思っています。中には、数日で取れるはずのないディプロムをいかにも取得したように載せていたり、大人から始めた人が教室を開き、発表会まで…と聞いた時は、正直ショックで空いた口が塞がりませんでした。)
現時点での、今後の目標として、DE 取得後の数年間は、やはりフランスの現場で経験を積み、最終的には、日本において、これまでの学んできた知識と経験を基に、教師として働きながらも、常に「正しい教育」とは何かを研究し続けていきたいと思っています。
今後も学び続け、それをお伝えする場としてこのブログがますます多くの方のお役に立てるように、取り組んでいきたいと思います。
超長文にも関わらず、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
それでは、また!
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